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「創建1250年記念 奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」は、西大寺の創建1250年を記念し、東京展、大阪展、山口展を巡回して開催され、西大寺の所蔵する彫刻、絵画、工芸、古文書などの国宝、重要文化財を含む名宝が公開された。

 東京展:2017年4月15日(土)〜6月11日(日) 三井記念美術館
 大阪展:2017年7月29日(土)~9月24日(日) あべのハルカス美術館
 山口展:2017年10月20日(金)~12月10日(日) 山口県立美術館

東京展の期間内にはこの展覧会があることすら知らなかった。初めて知ったのは、大阪展のフライヤーに「ひさなが志安M」が使われているとの情報が届いた時だ。「創建1250年記念 奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝」というタイトルだけとはいえ、「ひさなが志安M」が実際に使われているのを見るのは初めてだったので素直にうれしかった。

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それでは山口展のフライヤーはどうだろうかと山口県立美術館のウェブサイトを覗いてみたら、フライヤーのPDFが置いてあった。フライヤーのなかに「ひさなが志安M」は見当たらなかった。タイトルは分断されているが、いわゆる描き文字(レタリング)だった。少しポップな感じがする。
東京展はすでに終了しているが、三井記念美術館のウェブサイトの「過去の展覧会一覧」のページに画像が残されていた。明朝体を加工して使っている。もちろん「ひさなが志安M」はない。
東京・大阪・山口各会場独自の展示構成とはいえ、西大寺所蔵の名宝であることには違いない。フライヤーはどれも仏像をモチーフにして、タイトルの文字を重ねているが、まったく違う表情を見せている。タイトルの書体の違いによって、異なる展覧会のようになるのが面白い。それぞれの意図があるのだろう。
ふと、西岡たかしの「大阪弁」という歌を思い出した。少しもじってみた。(個人の感想です)

あのねェ ボクねェ やっぱりねェ
大阪のんが好きでんねん
(元歌は、大阪ちゅうのが好きでんねん)
by imadadesign | 2017-12-06 12:33 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

高尾山口(たかおさんぐち)駅の駅名表示に「きざはし金陵M」が使われているとの情報があり、それでは行ってみようと思い立った。高尾山口駅は、京王電鉄高尾線の終着駅であり、高尾山へのアクセス駅である。1967年の開業から50年を経て、昨年(2015年)春にリニューアルしたとのことである。
高尾山口駅のホームに降り立つ。駅のホームには杉材を多く使って、和の空間が演出されているようだ。案内板の「高尾山口」という駅名が目に飛び込んできた。すこし加工してあるものの、「きざはし金陵M」のようだ。

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改札を出て、駅舎を振り返ってみる。この駅舎の設計を担当したのは世界的に有名な建築家の隈研吾氏だそうだ。木組みによるダイナミックな屋根は高尾山薬王院をイメージしたという。駅舎の外装、内装にも杉材が多く使われている。東京都指定天然記念物である「高尾山のスギ並木」にちなんだのだそうだ。表玄関の「高尾山口駅」という看板は、近くから見るとカッティングはかなり粗いのだが、少し遠くから見ると「きざはし金陵M」をベースにしたものだと思われる。もうひとつの「高尾山口駅」という看板も同様である。

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高尾や八王子の観光情報を手に入れることができる「高尾山口観光案内所・むささびハウス」も併設されており、その表示も「きざはし金陵M」だ。ガラス面で、しかも開店中で扉が解放されており、ちゃんとした写真が撮れなかったのがちょっと残念だった。

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使われていたのはこれだけだが、こういった駅のサインに使われるとは想定していなかったので、とても嬉しく思った。活字書体は印刷物に限定されるものではないのだ。このような使い方が増えることも、これからの楽しみのひとつである。

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せっかくだから、高尾山に登った。もちろんケーブルカーで。多くの登山客であふれていた。
by imadadesign | 2016-11-09 20:25 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

2月19日に、名古屋市蓬左文庫の開館80周年記念展示「コレクションが語る蓬左文庫のあゆみ」を観にいった。そのとき徳川美術館では開館80周年記念展示「尾張徳川家の雛まつり」をやっていた。その片隅で「文化のみちスタンプラリー」というフライヤーを目にした。名古屋陶磁器会館では企画展「雛人形で彩る陶磁器会館」が、文化のみち二葉館では「川上貞奴の手書き雛の羽織と雛人形」展が開催中とのことだった。
 名古屋城から徳川園に至るエリアには、江戸から明治、大正へと続く名古屋の近代化の歩みを伝える貴重な歴史遺産が多く残されているということで、「文化のみち」と名付けて活用をすすめているということだ。
 雛人形に興味があるわけでもなかったし、スタンプを集めようとは思わなかったが、徳川美術館に置いてあった名古屋陶磁器会館のフライヤーに「あおい金陵M」を発見したこともあって、名古屋陶磁器会館から文化のみち二葉館へと巡ってみることにした。
 名古屋陶磁器会館は昭和7年に建築された国登録有形文化財で、名古屋市重要景観建造物である。映画やドラマ、雑誌の撮影場所としても活用されているとか。その玄関脇に置かれた看板の「あおい金陵M」が出迎えてくれた。

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企画展「雛人形で彩る陶磁器会館」は、2月5日(金)~3月4日(金)まで、土日祝は休館(会期中の日曜日は12時〜16時開館)とのこと。金曜日だったのはラッキーだった。フライヤーには2種類あった。「縦組み版」「横組み版」ということにしよう。

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●フライヤー「縦組み版」
企画展のタイトルに「あおい金陵M」が縦組みで使われている。

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会場に入ると、陶磁器製の雛人形が並んでいた。中外陶園・薬師窯(瀬戸市)の陶磁器製の雛人形である。また、TK名古屋人形製陶(瀬戸市)の陶磁器製の雛人形は、日本で唯一製造されているレース人形で、男雛の纓と女雛の後ろのリボン部分がレースになっている。
 瀬戸製の雛人形のほか、「名古屋絵付け」を施した名古屋オリジナルの立雛なども展示されていた。なごや凸盛隊・安藤栄子さんの絵付け「凸盛り春盛りお雛様」など、白磁に様々な絵付け技法を施した作品もあった。

●フライヤー「横組み版」
企画展のタイトルに「あおい金陵M」が縦組みで使われている。

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 企画展会期中の日曜日には、「お雛様ワークショップ」が開催されている。2月7日と14日には文化庁芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)として名古屋陶磁の技を伝える「転写絵付け体験」が開催されたそうだ。
 7日は「白磁の立雛に転写紙を使って着飾ってみよう」、14日は「白磁の小物入れに転写紙を使って飾り付けよう」ということで、いろんな柄の転写紙を自由に組み合わせてオリジナル作品を作るというもの(焼成して完成となる)。講師は、なごや凸盛隊の安藤栄子さんと杉山ひとみさん。
 陶磁器以外の「お雛様ワークショップ」として、「アイシングクッキー作り体験」や「こども能楽教室+ひなまつり工作」などが企画されているとのこと。

展示会場にもうひとつのフライヤーが置いてあった。2月27日(土)に開催予定の「名古屋絵付け~現在・過去・未来~」のフライヤーである。これを「絵付け版」ということにしよう。

●フライヤー「絵付け版」
このタイトルにも「あおい金陵M」が縦組みで使われている。

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なごや凸盛隊・杉山ひとみさんのコーディネーションで、基調講演&シンポジウム「地域の文化遺産を活かすには……」のほか、職人・高木はるゑ氏による「凸盛り竜」の実演、凸盛りを中心とした作品展示があるそうだ。
by imadadesign | 2016-02-23 09:42 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

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農林水産省の新聞広告
(2008年2月25日、27日、29日付朝刊に掲載)

農林水産省の新聞広告で、株式会社博報堂プロダクツの制作によるものだ。3連作になっており、2008年2月25日、27日、29日の朝刊に掲載された。「海外へ依存する食卓のリスクをおさえ、日本にある食材を見直そう」というキャンペーンである。当時、農林水産省では「食材の未来を描く戦略会議」を開催して、国民の意見を募集していたようだ。

Vol.1「未来の食のために、今、できることがあります。」
Vol.2「和の食材だから日本産、というのはほぼ思い込みです。」
Vol.3「おいしいものは、近くにもあります。」

このキャッチ・コピーもそうだが、ボディ・コピーにも選ばれたのは「さくらぎ蛍雪M」である。一読者としてみて、ここは明朝体でもゴシック体でもしっくりこない。「さくらぎ蛍雪M」は肉筆に近く、かつ冷静に訴えかけてくる書体だ。強さもある。いい選択だったと思う。
漢字書体「蛍雪」は中国・清の時代、日本で言えば江戸時代に生まれた書体である。和字書体「さくらぎ」は大正時代の木版教科書の書体である。活字書体として再生したものが、そういった時代性を超えて受け継がれていくというのは心地よい。



清代の刊本字様から復刻した「蛍雪」と組み合わせる和字書体は、大正時代の教科書に用いられた木版印刷字様「さくらぎ」(和字書体三十六景)を選んだ。「清朝体、和字スクールブック、オールド・ローマン」の組み合わせを基本としている。清朝体は、清代の木版印刷字様なので、和字書体は明治期以降の教科書に用いられた楷書体と組み合わされた「和字スクールブック」カテゴリーと合っていると思う。
「和字オールド・スタイル」カテゴリーに属する「はなぶさ」(和字書体三十六景)、「まどか」(和字書体三十六景)との組み合わせも考えられる。「まどか」はもともと楷書活字と組み合わされていた。「はなぶさ」は近代明朝体と組み合わされていたが、清朝体との相性がいいと思われる。
「和字スクールブック」カテゴリーでは、「まなぶ」(和字書体三十六景)や「しおり」(和字書体三十六景)と組み合わせてもいいだろう。
by imadadesign | 2014-12-08 19:00 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

新潟県の魚沼市立伊米ヶ崎小学校が、明治7年7月10日に仮開校してから今年で創立140周年を迎え、2014年10月25日に、創立140周年記念式典が開催された。あわせて、創立140周年を記念して建立された「校歌記念碑」の除幕式が行われた。その「校歌記念碑」に、漢字書体「龍爪」や「蛍雪」、和字書体「ふみて」を使っていただいている。

「校歌記念碑」は3枚仕立ての碑である。

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 第1碑の表面には、「伊米ヶ崎小学校創立百四十周年記念 校歌記念碑」の文字が漢字書体「龍爪」で組まれている。「龍爪」はもともと木版印刷のために彫刻された中国・南宋の四川地方の刊本の書体である。機械彫りだが、その力強く端正な書風がよく出ている。

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 第1碑の裏面には、解説文が「蛍雪」と「ふみて」の組み合わせで組まれている。「蛍雪」はもともと中国・清代の官刻本の書体で、おだやかな書風である。「ふみて」は明治時代の手習い手本をデジタル・タイプとして再生した書体である。にくい組み合わせである。

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第2碑は、北原白秋の作詞を地元の書家が揮毫したのだそうだ。表面に1、2番、裏面に3、4番が刻まれている。「守れ 訓の星と稲」と、子供たちに呼びかける。ここはやはり肉筆の暖かさがいいようだ。
 第3碑の表面は、山田耕筰作曲の楽譜になっている。タイトルは「蛍雪」、歌詞は「ふみて」である。その裏面には「蛍雪」で「平成二十六年十月二十五日 伊米ヶ崎小学校」と組まれている。

伊米ヶ崎小学校は、現在では全校児童が100人にも満たない小さな小学校である。20年前に学校に森をつくろうということで「ふるさとの森」ができた。今では子どもたちが思い切り活動できる立派な森として脈々と受け継がれている。
 そんな小学校の記念碑に、活字書体が使われることは光栄なことである。この碑は、今は紅葉をうつしている。冬には雪をうつして白くなり、春から夏には緑色に染まるだろう。四季折々に、末永く子供たちを見続けていくことを願っている。
by imadadesign | 2014-10-28 20:54 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

嵯峨本はミステリー

和字書体「さがの」は、影印本の『伊勢物語 慶長十三年刊 嵯峨本第一種』(片桐洋一編、和泉書院、1998年)から、単体の文字をサンプリングしてデジタル・タイプ化したものである。適切なサンプルが得られない字種は、『影印本 方丈記』(山岸徳平編、新典社、1999年)も参考にした。
 嵯峨本とは、京都の嵯峨で角倉素庵〔すみのくらそあん〕らが、慶長・元和(1596—1624)にかけて刊行したものである。おもに木活字をもちいて、用紙・装丁に豪華な意匠を施した美本で、13点が現存しているそうだ。

「さがの」は、三津田信三氏の小説『刀城言耶〔とうじょうげんや〕シリーズ』の講談社文庫版のカバー・デザインに使用されている。このシリーズは、2014年7月現在で7作が講談社文庫版として刊行されている。カバー装画は村田修氏、そしてカバー・デザインは坂野公一氏によるものである。
 小説家の刀城言耶が訪れた先で起こる民俗学的な怪奇事件に挑むシリーズで、ミステリランキング等で注目を集めており、とくに 『水魑の如き沈むもの』は第10回本格ミステリ大賞を受賞している。

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厭魅(まじもの)の如き憑くもの (三津田信三著、講談社文庫、2009年03月)
首無(くびなし)の如き祟るもの (三津田信三著、講談社文庫、2010年05月)
山魔(やまんま)の如き嗤うもの (三津田信三著、講談社文庫、2011年05月)
密室(ひめむろ)の如き籠るもの (三津田信三著、講談社文庫、2012年05月)
凶鳥(まがとり)の如き忌むもの (三津田信三著、講談社文庫、2012年10月)
水魑(みづち)の如き沈むもの (三津田信三著、講談社文庫、2013年05月)
生霊(いきだま)の如き重(だぶ)るもの (三津田信三著、講談社文庫、2014年07月)
幽女(ゆうじょ)の如き怨むもの (三津田信三著、文庫版未刊)

このカバー・デザインにおける「さがの」にはふたつのミステリーが隠されている。「る」と「む」に違和感を覚えたのだ。
●「る」のミステリー
『首無の如き祟るもの』の「る」は「さがの」だが、『密室の如き籠るもの』の「る」は「なにわ」が、『生霊の如き重るもの』の「る」は「さきがけ」が使用されている。つまり、それぞれ異なった書体の「る」が使われていたのだ。
●「む」のミステリー
『密室(ひめむろ)の如き籠るもの』の「む」(ふりがな)は「さがの」だが、『凶鳥の如き忌むもの』と『水魑の如き沈むもの』の「む」は「なにわ」が使用されている。文庫版未刊の『幽女の如き怨むもの』の「む」は「さがの」のままなのか、「なにわ」に変えるのか、はたまた別の書体の「む」になるのだろうか。
by imadadesign | 2014-07-12 11:58 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

なにか埼玉県らしい手みやげで、日持ちのよいものはないだろうかと池袋東武百貨店で物色していたところ、1階で「草加葵の倉」という和菓子店をみつけた。草加せんべいなら埼玉県らしいし、もちろん日持ちもいい。しかも、店内の看板には「きざはし金陵M」で組まれたロゴが大きく掲げられているではないか。
「株式会社 草加葵」は、大正5年の創業である。以来80年を越える歴史を有し、現在では草加せんべい専業企業として日本一の売上げ及び生産量を記録しているという。「草加葵本舗」というブランドでは、産地・素材にこだわった草加せんべい、あられを製造している。加えて「花華遊楽 葵の倉」では和菓子の製造も行なっている。
「草加 葵の倉」は、「和」と「洋」のセンスを取り入れたオリジナルせんべい、おかきのブランドで、池袋東武百貨店のほかにも、まるひろ川越店、松坂屋上野店、高島屋大宮店など多くの百貨店に出店している。

●店内ディスプレイ
残念ながら、百貨店の決まりごとで店内の写真撮影はNGだということであった。このようなシンボルマークとブランド名のロゴタイプの入った看板があり、商品ケースにも、このシンボルマークとロゴタイプのバリエーションが使われている。このシンボルマーク、徳川家と関係があるのだろうか。

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●紙袋と包装紙
紙袋の両サイドに「草加 葵の倉」というブランド名が「きざはし金陵M」で縦に組まれている。包装紙はシンボルマークだけで構成されたものであったが、同じイメージカラーなので、統一感がある。

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●箱と個別包装
購入したのは「海千楽」という、富山湾白えび、瀬戸内青のり、富山湾ほたるいか、磯の香うに、駿河湾桜えび、四万十川青さのりの詰め合わせセットであった。もちろん箱も個別包装も「きざはし金陵M」で統一されている。

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ほかにも、バージンオリーブオイルなど欧風せんべい、おかきの詰め合わせ「欧千楽」、草加ふくみせんなど伝統的なせんべい、おかきの詰め合わせ「草千楽」、そして海千楽と欧千楽を合体した「葵千楽」があり、これらの箱と個別包装は「きざはし金陵M」で組まれている。

●小さな印刷物
店内に商品を説明した小冊子が置かれていた。「きざはし金陵M」がふんだんに使われている。全部ではないところが、ちょっとだけ惜しい。箱の中に入れられていたカードは、表はイメージカラーにシンボルマークとロゴタイプの組み合わせだが、裏には店主のことばが「きざはし金陵M」で組まれている。

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一部に「きざはし金陵M」ではないところがあって少し残念ではあるが、これだけ「きざはし金陵M」が使われているのだ。老舗なのだが、新しい試みのブランドである。そういったところが「きざはし金陵M」のイメージと重なるということなのだろう。
by imadadesign | 2014-04-02 08:22 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

●リーフレット
 はじめに出会ったのは、ある展覧会に行ったときに偶然みつけたA4二つ折りのリーフレットだった。美しい銅造仏頭(国宝)とともに、「国宝興福寺仏頭展」という大きな文字が「さきがけ龍爪M」で組まれていた。会期(2013年09月03日−11月24日)、会場(東京藝術大学美術館)、その他の情報の小さな文字も「さきがけ龍爪M」だ。
 ご自由にお取りくださいという感じで置かれていたので、記念にいただいてきた。そのときにはリーフレットだけ手に入ればいいかと思っていた。リーフレットでも文章には使われていなかったからだ。それでも「仏頭大使」にみうらじゅんさん、いとうせいこうさんが就任していたこともあって気にはなっていた。

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●中吊り広報物
 再会したのは11月のはじめ、地下鉄車内の中吊り広報物だった。(残念ながら写真はないが)仏頭が左右両方で展開されていて、なかなか目を引くレイアウトだ。「白鳳の微笑みに会いに」、ちょっと行ってみようと思った。のこりの開催期間が少なくなっていた。

●ポスター
 久しぶりの上野駅だった。構内を抜けて公園口の改札から出る。上野公園を横切って、東京藝術大学の脇を通っていくと、展覧会のポスターが貼られていた。「さきがけ龍爪M」もさらに大きくなって迫力満点である。

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●看板
「国宝 興福寺 仏頭展」は思っていたより、人気があるようだった。すでに多くの人が訪れていて、入場制限が行われていた。その向こうにドーンと看板が。さらに大きくなった「さきがけ龍爪M」。まずは、この看板を仰ぎ見ることにした。
 なんと、この看板を背景にして記念写真を撮っている人がいる! 私がいるあいだに何組も記念写真を撮るひとがいるのだ。もちろんその美しい銅造仏頭が目当てなのだが、「さきがけ龍爪M」も写り込むといいなと思ってしまった。

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●チケット
「白鳳の微笑みに会いに」きた。少しばかり並んで、やっとチケット売り場にたどり着いた。チケットには米粒より小さい「さきがけ龍爪M」がいた。小さいなりに、シャープで存在感があるように感じた。

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 肝心の展示のことも少しは書いておこう。メインの銅造仏頭(国宝)はもちろん、木造十二神将立像(国宝)と板彫十二神将像(国宝)も圧巻だった。また、春日版板木(重要文化財)を見ることができたのもよかった。
by imadadesign | 2014-03-26 08:05 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

「豊田勇造ピースライブ読本」は、ライブのときに無料で配布された冊子である。制作はさいたま市の「市民じゃ~なる」だ。その活動内容をくわしく知らないのだが、突然、この「豊田勇造ピースライブ読本」が郵送されてきた。欣喜堂の書体を気にいってくれたということのようだ。ありがたい。
 豊田勇造というフォーク・シンガーについてもまったく知らなかった。1949年京都市生まれだから、私より5歳ほど年上だ。関西フォーク創世紀から、一貫してメッセージ・ソングを歌い続けている。ライブ映像は「YouTube」で見ることができ、エッセイは「青空文庫」で読むことができる。

 最初の「豊田勇造ピースライブ」は、2003年4月29日に、さいたま市の「アートスペース芸術村」というところで開催されている。「市民じゃ~なる」にとって初めての音楽イベントだったそうだ。
「豊田勇造ピースライブ読本2003」は手作り感たっぷりの小冊子なのだが、だからこそ挑戦的かつ刺激的なデザインをされているようだ。24ページある本文が、和字書体「あけぼのM」で組まれている。近代明朝体と合わせるために、合成フォントの機能で「あけぼのM」をすこし大きくしてあるようだ。
「あけぼのM」は本文用の書体として制作したので、これだけの文章の量で使われるのをみるとうれしくなってしまう。プロポーショナルではないのだが、並べただけで意連を感じさせ、思いのほか読みやすいのだ。もともとが、そういうフォルムになっているのだろう。
 それにしても、2002年9月に発売されたばかりの「和字 Revision 9」をいちはやく購入してくれている。市民活動とか関西フォークに「あけぼのM」のまったり感はあわないとは思ったが、小冊子の制作者の好みというよりも、なにかに挑戦したいという意欲が感じられた。読者からの評判もよかったようだ。

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 つぎの「豊田勇造ピースライブ」は、2004年4月29日に、前年と同じ「アートスペース芸術村」で開催されている。
「豊田勇造ピースライブ読本2004」では、30ページの本文と歌詞のページが、和字書体「えどM」で組まれている。2003年12月に発売された「和字 Tradition 9」に入っている書体だ。おそらく発売してすぐに購入していただいたのだろう。
「えどM」は癖のある書体である。本文用として制作したのだけれど、実際には使いにくいのではないかと思っていた。そういえば「和字 Tradition 9」のCDジャケットも「えどM」が選ばれていたのだった。使う人から学ぶことことも多い。それにつけても、近代明朝体のなんでも受け入れる包容力のすごさ……。

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「九条の会・さいたま」という団体が結成され、その団体が主催者となって「豊田勇造ピースライブ」が開催されるようになった。2005年7月18日に、ひきつづきアートスペース芸術村で開催されている。
 開催日が遅くなった分、「和字 Succession9」が間に合った。2005年5月の発売だった。「豊田勇造ピースライブ読本2005」の制作は「市民じゃ~なる」だ。そして、32ページにおよぶ本文書体には、「和字 Succession9」に入っている「ふみてM」が使われた。さらに、同年11月23日の「五十嵐正史とソウルブラザーズ ピースライブ読本2005」にも本文書体に「ふみてM」が使われている。
「ふみてM」も「和字 Succession9」のCDジャケットに選ばれた書体だ。これを本文書体にもってくるなんて、さすがミニコミ誌の底力だ。商業印刷ではさすがにこうはいかないだろう。こういったところから新しいウェーブが巻き起こることを期待している。

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 その後、音信はとだえてしまったが、「市民じゃ~なる」は活動を継続されているようだ。「豊田勇造ピースライブ読本」が制作されているかどうかはわからないが、「和字Ambition9」も含めて、欣喜堂の書体をどこかで使い続けてくれていると信じている。
 豊田勇造は、「東日本ファン支援ライブプロジェクト」などで意欲的に活動をつづけている。
by imadadesign | 2014-01-16 08:30 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)

蒼井優と、みっつの書体

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 蒼井優から年賀状をもらったのは、2011年元旦のことだ。いやいや、本当は日本郵政グループのDMである。年賀状が配達された全家庭に配られたものだ。ちゃっかり出演する映画『洋菓子店コアンドル』の宣伝もしちゃったりして。
 裏面は当時の社長名でのあいさつになっている。蒼井優からのことばも、社長からのあいさつも、使われている和字書体は「まどかM」だった。このDMをはじめ、テレビコマーシャルなどにも蒼井優とともに「まどかM」が出てきていた。
 「まどかM」と同じ系統の、いわゆる築地活版製造所五号活字を覆刻した書体、あるいはそれを意識して制作された書体は数多い。そんななかから「まどかM」が選ばれたのである。微妙なテイストの違いに着目して選ばれたとしたら、とてもうれしい。

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 蒼井優という女優を私がはじめて知ったのは集英社文庫の「ナツイチ」というキャンペーンだった。2006年のことである。そのとき無料で配布されていた小冊子に使われていた書体が「かもめM」だったので、ふと手にしたのだが、モデルをつとめていたのが蒼井優だった。
 あのとき、集英社では羽海野チカのマンガ『ハチミツとクローバー』が好評で、映画化されていた。その映画に蒼井優が出演していたのだ。さらにこの映画をノベライズ化したものや、写真集なども集英社から発売されていた。
 私は原作のマンガも、映画も、文庫本もみていないのでなんとも言えないが、『ハチミツとクローバー』から、蒼井優、ミツバチのイラスト、そして和字書体「かもめM」へと連なっていったのだろうか。「かもめM」には「チクリ」という感じがあるように思う。
 この年、蒼井優は映画『フラガール』に出演し(これは観た!)、日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞など、数多くの助演女優賞、新人賞などを獲得した。

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 2007年の「ナツイチ」のキャンペーンのモデルも蒼井優だったが、小冊子に使われていた書体は
「ますらおM」に変わった。コピーも「チクリ」から「教えてあげる」とやさしくなっている。だから、ほんわりとした「ますらおM」なのだろう。
 この年には、松尾スズキの小説を映画化した『クワイエット・ルームにようこそ』(監督・脚本、松尾スズキ)に出演している。松尾スズキは私と大学の学部、学科、専攻が同じなので、ほんの少しだけ縁を感じている(ちょっと強引だったかな?)。

 さて、最近は悪女イメージもついてきた蒼井優、いまではどんな書体が似合うのだろうか。また何かの機会に(書体が)ご一緒できたらと思ったりしている。
by imadadesign | 2014-01-14 09:00 | 書体探索隊[グラフィック] | Comments(0)