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『富嶽三十六景』に因んで

和字書体は、平安時代から現代までの日本の書写と印刷の歴史にはぐくまれた36書体をとりあげて、デジタルタイプとして再生した。これを葛飾北斎の『富嶽三十六景』から、「和字書体三十六景」となづけた。
『富嶽三十六景』は、1831年(天保2年)頃から出版されたものだ。このシリーズは、歌川広重の『東海道五拾三次』のように名所絵として制作・販売されたものではない。富士山のさまざまな条件で異なる山容の表情に、最大の興味が注がれているようだ。
「和字書体三十六景」もまた、和字書体のさまざまな形象を選び出しているということでは『富嶽三十六景』と共通すると思っている。漢字書体にあわせて歴史別に分類しているが(分類名は私案)、和字書体は景色だととらえている。
 ところで、追加で制作している12書体を「和字書体十二勝」としている。『富嶽三十六景』は三十六図および追加十図の四十六図よりなる。実際には四十六図あるので、「和字書体三十六景」も、36書体および追加12書体としてもいいと思うが、わかりやすくするために「和字書体十二勝」としている。

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( 暫定版 2015年4月22日更新)

やまと(夜麻登) 写本
第一景「あけぼの」(資料:粘葉本『和漢朗詠集』、1013年?)
第二景「やぶさめ」(資料:定家筆『更級日記』、1230年?)
第三景「たかさご」(資料:金春本『風姿花伝』、室町前期?)
第四景「さよひめ」(資料:奈良絵本『さよひめ』、室町後期?)

やまと(夜麻登) 古活字版
第五景「ばてれん」(資料:キリシタン版『ぎや・ど・ぺかどる』、1599年)
第六景「さがの」(資料:嵯峨本『伊勢物語』、1608年)

やまと(夜麻登) 木版(整版) ※近世活字版
第七景「げんろく」(資料:浮世草子『世間胸算用』、1692年)
第八景「なにわ」(資料:浄瑠璃本『曾根崎心中』、1703年)
第一勝「すずのや」(資料:『玉あられ』、1792年)
第九景「えど」(資料:合巻『偐紫田舎源氏』、1829年−1842年)

やまと(夜麻登) 金属活字版
第十景「いけはら」(資料:『長崎新聞 第四號』、1873年)
第十一景「ひさなが」(資料:『作文独学大全』、1894年)
第十二景「ゆかわ」(資料:『富多無可思』、1909年)
▽碑刻
第十三景「いしぶみ」(資料:「槙舎落合大人之碑」、1891年?)


ひのもとのめばえ 木版・金属活字版
第十四景「もとい」(資料:『字音仮字用格』、1776年)
第二勝「うえまつ」(資料:『古事記伝二十二之巻』、1803年)
第三勝「ひふみ」(資料:『神字日文伝』、1824年)
第十五景「さきがけ」(資料:『仮字本末』、1850年)
第十六景「あおい」(資料:『歩兵制律』、1865年)

ひのもとのいぶき 金属活字版
第十七景「きざはし」(資料:『長崎地名考』、1893年)
第十八景「かもめ」(資料:『内閣印刷局七十年史』、1943年)
第十九景「はやと」(資料:『二人比丘尼色懺悔』、1889年)
第二十景「はなぶさ」(資料:『少年工芸文庫』、1902年)
第二十一景「さおとめ」(資料:『尋常小學國語讀本』、1901年)
第二十二景「まどか」(資料:『富多無可思』、1909年)
▽明治初期の活字
第四勝「にしき」(資料:『Book of Specimens』、1877年)


ひのもとのさかえ 金属活字版
第二十三景「たおやめ」(資料:『日本印刷需要家年鑑』、1936年)
第二十四景「ほくと」(資料:『新考北海道史』、1950年)
第二十五景「たいら」(資料:『書物の世界』、1949年)
第五勝「あずま」(資料:『東京今昔帖』、1953年)
▽宋朝体活字
第二十六景「みなみ」(資料:『本邦活版開拓者の苦心』、1934年)


ひのもとのゆたか 金属活字版
第六勝「ひばり」(資料:『死を開く扉』、1959年)
第七勝「めじろ」(資料:『センサスの経済学』、1964年)
▽新聞書体
第二十七景「うぐいす」(資料:『九州タイムズ』、1946年)

ひのもとのかなめ 木版・金属活字版
第八勝「まき」(資料:『和英通韻以呂波便覧』、1868年)
第二十八景「ふみて」(資料:『啓蒙手習之文』、1871年)
第二十九景「まなぶ」(資料:『国文中学読本』、1892年)
第三十景「さくらぎ」(資料:『尋常小学修身書巻三』、1919年)
▽文部省活字
第三十一景「しおり」(資料:『小學國語讀本  巻八』、1939年)

えみし(愛弥詩) 金属活字版
第九勝「みなもと」(資料:『新撰讃美歌』、1888年)
第十勝「たまゆら」(資料:『言海』、1931年)
第三十二景「ことのは」(資料:『辞苑』、1935年)

くまそ(球磨曽於)1 金属活字版
第十一勝「はるか」(資料:『活字と機械』、1914年)
第三十三景「くれたけ」(資料:『活版総覧』、1933年)
▽二分ノ一活字より
第三十四景「くらもち」(資料:『活版見本』、1903年)

くまそ(球磨曽於)2 金属活字版
第三十五景「ますらお」(資料:『活字見本帳』、1936年)
第十二勝「めぐろ」(資料:『センサスの経済学』、1964年)
▽孔版の沿溝書体
第三十六景「くろふね」(資料:『沿溝書体スタイルブック』、1952年)
by imadadesign | 2014-07-26 22:50 | 書体雑記帳[和字書体]